人気ブログランキング | 話題のタグを見る

個人利用・覚書


by m_sleepless_k

図書及び図書館史

<西洋を中心として、それぞれの時代(古代、中世、近世、近世以降)の図書館発達の特徴的なところを探り、コンパクトに説明せよ>★1800~2000字★参考文献を文末に記載★

1.古代…各地に起こった文明のなかの文字の誕生と共に、記録のための手法として記述とその保管がはじまる。最も早くに誕生した図書館というべきものは古代メソポタミアのバビロニアにおける寺院図書館がはじめとも、アッシリアのアッシュール・ハニバル王の文書館ともいわれるが、図書館として機能していたという点で見ればアレクサンドリアの図書館がはじめと言えるだろう。また、7世紀にイスラム教徒に占拠され、今日物理的証拠が全くないというアレクサンドリアの図書館があるが、その蔵書を焼き払ったとも言われるカエサルは公開の図書館建設を計画していたという。2世紀には図書館行政官があらわれ、ローマ皇帝により図書館は行政機構のひとつとして位置づけられた。

2.中世…古代ローマ文化の衰退にかわりキリスト教的文明が登場し、時代は西ローマ帝国崩壊によって中世へと移行する。以後、15世紀半ばの活字印刷技術が発明されるまで、キリスト教修道院図書館が文化的にも大きな寄与をしている。この歴史的背景には、ローマ帝国時代に布教されたキリスト教が『聖書』という文献を信仰の要とする宗教であることがあり、その『聖書』が収められる図書館が、独自の崇高な存在となるのは必然的なことである。その後カルル大帝により西ローマ帝国の復興がなされるが王権としては弱く、ゲルマン民族の大移動からおこったフランク王国が分裂し、うち東フランクのオットー1世が帝冠をうけ成立した神聖ローマ帝国と、東ローマ帝国(ビザンティン)、ギリシャ正教会とが覇を争うことになる。このような宗教的国家地図のなかで、修道院図書館が設けられた。この修道院には文献が集められていたことが推察され、現在の図書館の萌芽がみられたといってもいいであろう。また、このころの主な仕事には書写もあり、その後校閲・校訂をうけ製本となるという校訂もこのころ確立され、図書としての形が整いつつあった。さらに12・13世紀になると大学がヨーロッパ各地に誕生し、大学図書館が設立される。この大学図書館では修道院図書館と異なる図書管理が必要とされ、鎖につながれた本が広く見られた。また、後に教皇権が衰退して写本が放棄されたこともあったが、逆に王室のコレクションが充実し始め、近代の図書館の形成につながるものとして大きな意義をもっている。
そして14・15世紀の十字軍遠征によって、西ヨーロッパに古代文化を還流させ、王室や各諸大公・富豪(メティヂ家など)の積極的な写本収集を引き起こし、これがのちのルネサンスの土台となる。

3.近代…ルターによる宗教革命、また各国の市民革命を経て市民社会のなかにも図書が流布し、かつルネサンスによる活字印刷の発明という大きな出来事もあって、写本から印刷図書の時代へと移行する。これにともない、市民による図書の保存という、市民社会の図書館も発展する。16世紀末の図書館では閲覧台と壁面書架が用いられるようになり、大広間図書館など幾千という蔵書を持つ図書館も多くなってくる。また、フランスでは納本制度も敷かれこれが一国の出版物を全て網羅的に集めることを可能にし、「国の図書館」が芽生えた。また、科学技術の発展とともに学術雑誌が誕生したのもこのころである。イギリスでは大英博物館が誕生し、円形閲覧室が開かれ、国の中央図書館となる。また、市民の図書館として「コーヒーハウス」が普及し、ここで新聞や雑誌を読んだり、情報交換をするという場になった。そしてついに1850年、ロンドンで「図書館法」が通過し、地域住民のための図書館設置が地方自治体に義務付けられたのである。

4.近世以降…さて、以上のようにして図書や雑誌がひろまり、多く出版されるにともない、情報の量が爆発的に増えた。特に学術雑誌については「情報の爆発」とまで言われるほどになり、これまでの迅速かつ網羅的に取り扱うことが、今までの図書館の方法では困難になってくる。そこで1895年、国際学誌学会(IIB)が誕生し、『国際蔵書目録』の編纂事業を始めた。また、分類法でも『国際十進分類法』(UDC)が作られ、それらは1973年国際ドキュメンテーション連盟(FID)に引き継がれる。そして第二次世界大戦後、各国の出版物がその国の中央図書館など全国書誌作成機関によって交換可能なフォーマットにしたがって記録され。それが統合されることによって新たな「世界書誌」の可能性が開けつつあり、国際図書館連盟(IFLA)は世界的な文献の入手・利用体制の構築をUAPという語を用いて提唱している。この「世界書誌」の可能性として、現在は電子図書館などのオンラインの図書館ネットワーク(OCLC)を背景に複数参加館の共同分担によって総合目録を作成しようという「書誌ユーティリティ」が誕生しており、今後の発展が期待される。

それぞれの時代定義…古代=中世以前
              中世=帝政ローマ(96~)からルネサンス・宗教改革まで
              近代=17世紀の市民革命以後から「情報の爆発」まで
              近代以降=情報化社会と現代の図書館事情
by m_sleepless_k | 2005-06-22 19:24 | 司書